ディズニーの選考で、
「正直、乗り物の刺激だけで言えば、USJの方が上だと思います。」
と言い放った学生がいた。
一瞬、空気が止まった。
面接官の表情も、ほんの少しだけ固まった。
でも、学生は落ち着いた声のまま続けた。
「でも、私が働きたいのは乗り物の面白さではなく、体験そのものの設計なんです。」
その言い方に、思わず姿勢を正した。
面接官が静かに聞く。
「どういう意味ですか?」
学生は少し呼吸を置いてから、こう言った。
「USJはアトラクションの会社です。
ディズニーは物語の会社です。」
部屋が静まった。
言葉の重さが落ちてくる。
学生は淡々と続けた。
「USJは乗った瞬間がピークになるように作られています。でもディズニーは、並ぶ・乗る・降りる・歩く、その全部の時間に意味があるように設計されています。」
面接官が、ゆっくり頷き始めた。
学生は続ける。
「私は小さい頃からディズニーに行く度に感じていました。アトラクションより記憶に残るのは
・キャストさんの一言
・通路の香り
・エリアごとの音楽の変化
・パレードの余韻
そういう連続した体験なんです。」
乗り物そのものではなく、世界をまるごとを感じ取ってきた視点だった。
「USJは単体の楽しさ。
ディズニーは人生の記憶になる楽しさ。
私が作りたいのは後者です。」
面接官が少し笑って「なるほど……」と漏らした。
学生は、最後にこう締めた。
「刺激は人を驚かせます。
でも、物語は人を動かせます。
私は驚かせる人ではなく、生涯残る思い出を作る人になりたいんです。」
まさに視点のレベルが段違いだ。
面接官はゆっくりと息を吐いた。
「……あなたの言う意味がよくわかりました。」
結果は、もちろん採用だった。
コンテンツの先の価値まで語れる人は、本当に強い。